FUMONIN Hikaru's Artistic Days

Web投稿などで活動するアマチュア作家・小説家で、オケなどで活動するアマチュアのチェリストです。

チェロはオケ界のリベロ説? ~威風堂々のお話~

 6月に、オケで地方へ遠征して、演奏会をやります。素人さん向けのポピュラーな曲ということで、ベートーヴェンの運命をメインに、小品をいくつかやることに。

 

 先週、楽譜が配られましたが、その中に、エルガーの威風堂々第1番がありました。

(余談ですが、威風堂々といえば、第1番があまりに有名。番号が表記さ入れないことも多いですが、実は6番まであるのです:6番は未完で他の作曲家が補筆・完成)

 特に、トリオ部分の旋律が有名なのですが、これを気に入った英国の王様から「歌詞をつけてはどう?」と提案され、歌詞までついてるほど。歌詞は、国を讃える内容なので、第2の国歌とも呼ばれています。

youtu.be

 

 原題の「Pomp and Circumstance」は、シェークスピアの「オセロ」の台詞からとったんだそうです。直訳だとPompは「豪華」、「栄光」といった意味。わかりにくいのはcircumstanceで、直訳だと「状況」、「背景」などですが、多義的な意味があって、「儀式ばった」といった訳もあるようですが、そんなネガティブな響きの意味はにあいません。

 pompouslyは「堂々とした」という意味もあるようで、そうするとCircumstanceを「威風」と訳したのでしょうか?

 そんなわけで、「威風堂々」は、かなり思い切った意訳になっています。

 

 この曲。中学校でブラスバンド部に入って、音楽へ本格的に取り組み始めたとき、最初にやりました。とても懐かしい。パッと聞いた感じと違って、アウフタクトから始まるのがトリッキーで、拍を数えるのに苦労した思い出があります。♬|♫♪♬|♫♪♬…こんな感じです。こういうのは、ブラームスさんが得意ですよね。ほかにも、似たような曲を結構やったことがあるので、いつしか慣れました。

 

 それはそれとして、個人的には、エルガーさんの曲は、あまり演奏したことがなく、「エニグマ(謎)変奏曲」(Variations on an Original Theme for orchestra)と「南国にて(アラッシオ)」(In the South (Alassio))くらい。

 これまでの経験で感じたのは、「エルガーさんは、チェロを酷使してくれるよなあ」とうこと。この傾向は、リヒャルト・シュトラウスマーラーショスタコーヴィチなどのロマン派の後期的な作曲家にみられますよね。

 

 チェロは、オケの中では低弦楽器で、コントラバスとともに伴奏がメインのイメージがあります。ですが、音域的にはヴァイオリンと被る高音域まで演奏は可能で、音部記号もヘ音記号、ハ音記号(テナー記号)、ト音記号の3つが出てきます。

 初心者がまず戸惑うのはハ音記号(テナー記号)ですね。慣れるまで結構たいへんだった記憶があります。ヘ音記号とテナー記号はちょうど五度違いなので、超初心者の頃は、ヘ音記号で読んで隣の高い弦を弾けばいいといった、姑息なやり方もしていました。

 今ではまったく違和感なく読めるので、「あれっ! 今弾いてるのは、ヘ音記号? テナー記号? どっちだっけ?」みたいにボケることもあります。

テナー記号

 そういえば、以前、ラベルのダフニスとクロエ組曲をやったとき、パート譜ヘ音記号で8va…(8va alta:8度高く)というほぼ見ない記譜があったときは、感覚的についていけなくてたいへんでした。かえって、テナー記号の方が楽というもの。

 

 で、作曲家の話に戻りますと、チャイコフスキードヴォルザークなどのロマン派の作曲家になってくると、単独で旋律も担当することが増えてきます。古典派のパート譜は、チェロ・コントラバス共用(コントラバスの実音は、記譜よりも1オクターブ低い)が多いのですが、ロマン派になると別々になります。

 

 さらに、ロマン派も後期になって20世紀前後になってくると、オーケストレーションの技術がだんだんこったものになってきて、オケにおいてチェロは酷使されます。

 以前にもブログで書いたとおり、ハイポジションの高音を平気で弾かされますし、オケの中でも役割も、旋律だったり、中音域での分散和音だったり、低音部での伴奏だったりと何でも屋状態です。

 威風堂々もそんな感じで、幸い超高音は出てきませんが、メインの旋律を弾いていたかと思うと、その隙間でトロンボーンコントラバスなどの低音楽器とともに別な動機を弾き、またすぐにメインの旋律に戻るといった感じで、目まぐるしく駆け回る感じです。

 サッカーで言うと、ディフェンダーでありながら、攻撃にも参加するリベロみたいだなあ、と個人的には感じているのですが、共感は得られるのかな?

 

 いろいろな役割をするというのも、変化があって面白いです。威風堂々のトリオの旋律の部分も、チェロは最初は四分音符をきざんで伴奏をしていて、途中盛り上がり始めるところから旋律に参加します。

 旋律もいいですが、伴奏も、それはそれでこだわりがあります。旋律に寄り添って、ふさわしい雰囲気が出せているか? できているか否かで、曲の完成度がまったく変わります。

 練習はこれれからですが、今から楽しみです。