FUMONIN Hikaru's Artistic Days

Web投稿などで活動するアマチュア作家・小説家で、オケなどで活動するアマチュアのチェリストです。

細かいことは、忘れる ~ブラ2のお話~

 昨日、9月の定期演奏会の曲の練習がありました。しばらく、地方公演の練習をしていたので、しばらくぶりです。

 R.シュトラウスの薔薇の騎士は難しいので、練習し直して臨んだのですが、ブラームスの第2交響曲をやって、ビックリ。1カ月ちょい前に練習したことを、かなり忘れちゃってる!

 ブラームスの曲は、凝った臨時記号が多い。部分的に転調して、そこが聞いていてカッコいいところでもあるのですが、演奏していると、かなりトリッキーなので、楽譜を見ていたとしても、覚えていないと対応が難しい。

(おっと! ここは♮だった! フィンガリング、どうしてたっけ?)

 弦楽器は、二人一組でプルトを組むので、楽譜に個人的なフィンガリングは書けない。フィンガリングは、人それぞれですからね。そこが、悩みでもあります。

 でも、私は、個人の楽譜にも、ほとんどフィンガリングは書きません。フィンガリングの組み合わせは何通りも考えられるし、いろいろ試しているうちに自然と決まってくるからです。だから、練習初期の頃は、間違えることも多いです。

 戸惑いがちなのが、第2楽章。ロ長調(♯が5つ)という珍しい調性で、そもそも弾き慣れていない。中間部でテンポは変わらないものの、3連符がベースで進行し、音符が細かくなる。ここも臨時記号が多い。

(あらっ! 音が違うじゃん!)

 ♯2つに転調しているのを忘れてましたぁ。ごめんなさい🙇

youtu.be

 第2楽章は、いきなりチェロのメロディーから始まる。さすがに、そこは間違いませんでしたよ。これ、実はブラームスさんお得意の強迫ズラしのリズムです。4分の4拍子の4拍目(アウフタクト)から始まっているのです。数え方も4123|4123……という感じで進行していくのですが、突然、1234に変わったりします。でも、2楽章はテンポが遅いので、ついていくのは、さほど難しくない。

 リズムが凝っているのは、1楽章ですね。強迫ズラしあり、ヘミオラ(ベースの拍子と異なる拍子感のリズムを入れ込む作曲技法)ありで、感覚的に覚え込ませないとついていけない。あとは、慣れもありますけどね。

 1楽章は4分の3拍子なので、ここに2拍子のリズムを入れこむのは、ヴェートーヴェンの第3交響曲エロイカ)に代表される典型的なヘミオラです。ブラ2の場合、この2拍子のリズムが3個セットになって、拡大された3拍子になっていたりするところが、ベートーヴェンと違うところです。

 リズム的には一番の難関なのは、強迫ズラしのリズムが、フガート風になっているところですね。

 ボーイングも結構変更があって、それも戸惑いました。ある程度練習が進まないとボーイングも決まらないです。

 うちのコンミス(女性の場合、「コンサートマスター」ではなく、「コンサートミストレス」といいます。ファーストヴァイオリンの主席奏者のことです)は、弾いてみてしっくりくるまでボーイングを変えます。でも、それをいちいち教えてはくれない。要は、見て盗めということですね。あとはヴィオラもチェロと同じ動きをすることが多いので、こちらにも合わせるし、セカンドヴァイオリンにも必要があれば合わせます。

 なので、チェロのトップ奏者は、練習の時に指揮者やコンミスばかりを見ているわけにはいかず、他のパートのボーイングにも注意をむけていなければならないので、とても大変なのです。

 コントラバスは、だいたいチェロのボーイングに合わせる感じにはなっていますが、実は仲が悪い。簡単に言うと、弓の長さが違うので、チェロでできることが、コントラバスでは難しかったりするからです。コントラバスの場合は、割り切っている場合も多くて、合わさずに独自路線をいくことも、しばしばあります。

 一方で、R.シュトラウスの薔薇の騎士ですが、div.(ディヴィジ:一つのパートをさらに分けて違う音やパッセージを弾かせること)が多い。通常、ディヴィジは、2つ程度のことが多いです。この場合、普通はプルトの表(客席に近い側の人)と裏に分かれます。このとき、パート譜に一段で書き切れないときは、2段に分けて書かれ、表が上の段、裏が下の段を弾きます。

 R.シュトラウスさんは、他の曲でもそうなのですが、div.が多く、しかも単純な表/裏よりも複雑なパターンが出てきます。

 例えば、1・2プルトとその他に分かれ、さらに1・2プルトの中で表/裏に分かれるといった感じです。私は、今回、2プルトの裏を弾きますので、このパターンのときは、上の段の下の音を弾きますが、単純な表/裏のときは、下の段を弾くといった感じで、どの段を弾くかがコロコロと変わるのです。こればかりは、慣れるしかありません。さらに細かいdiv.もあって、パート譜は最大で4段になっています。

 前のブログでも書いたとおり、R.シュトラウスさんはチェロの高音域まで酷使するので、ヘ音記号・テナー記号・ト音記号と頻繁に変わります。

 で、やってしまった。ヘ音記号のところをテナー記号と思って、一瞬だけ弾いちゃいました。5度違いなので、ハモるんですが、かってに曲を変えるのはダメ。これでは「のだめ」になっちゃいます。

 こんな話は、アマチュアならではのこと。パート譜も数小節先くらいまでしか見れていないのです。プロの方は、全然違います。職業なのですから、事前準備はきちんとやっているし、そもそもブラームスの第2交響曲などのメジャーな曲は、何十回も演奏しています。

 以前、NHK交響楽団コンサートマスターの方が、パート譜はどのあたりを見ていますか? という質問に答えていました。答えは、3段くらい先を見ています、ということでした。ほぼ暗譜しているということだし、ひとつのメロディーの全体を見渡して、どこをどう表現するのかということを見据えているということです。さらに、コンサートマスターは、指揮者はもちろん、要所要所で鍵となるパートの奏者とアイコンタクトをとりながら演奏しています。それを知ると、どんなに上手だといってもアマチュアとプロでは、天と地ほどの差があるのだと、思い知らされます。

 とはいえ、地方公演が来週に迫ってきました。それまでは、そちらに集中するとして、定期演奏会に向けては、その後に頑張ります。